「化学」が好きですか?
「元素周期表」と聞いて、どういう感情がわいてきますか?
私みたいに「元素周期表」「化学」という言葉を聞いただけで、じんましんが出るほど拒絶反応を示す人もいるのではないでしょうか。
化学の授業、とにかく難しくて大嫌い。
「ちょっと、何言ってるのか分からないんだけど」
毎回、拒絶反応から始まる化学の授業なんて、全然頭に入らないし、楽しくもない。
この本を手に取ったきっかけも、「あなたの疑問も元素がまとめてお答えします」って書いてあったから。
化学嫌いの私には、”その疑問さえも起きないけど、どう答えてくれるの?”って、あまのじゃくな気持ちで読んでみました。
読み進めると、”へぇ~、そうなんだあ”って興味がわくのもあったり、少し難しい部分もあったりしたけど、結構面白かった。
難しい部分は、「鋼の錬金術師」のエドの気持ちで、錬金術を学んでるって思いで読んだりしていました。
そういうのを思い出す時点で、化学のレベルが知れちゃう。
化学が大嫌いな私がおススメする、今回の本。
元素にまつわるドラマを読みやすく、分かりやすく導いてくれます。
読み終わったころには、少し世の中が変わって映るかもしれない。
世界の見方が変わる元素の話
著者:ティム・ジェイムズ 訳者 / 伊藤伸子 / 出版社:草思社 / 発行日:2022-08-05
内容紹介:
この世界のレシピがあるとすれば、それは元素の調理法のことである。
周期表に収まる元素のそれぞれには、発見までのさまざまなドラマがあり、また周期表そのものにもドラマがある。
それらのときに可笑しく、ときに、真面目な元素の逸話の数々によって紡がれた本書を読めば、世界を見つめる目がきっと変わるはず。
なぜ、そうなる⁉
世界の難題もあなたの疑問も元素がまとめてお答えします。
森羅万象を解くもの
「水兵リーベ ぼくの船~」と語呂合わせて覚えた「元素周期表」。
1度は見たことがあるのではないでしょうか。
身につけている服、呼吸している空気、あなたが読んでいるこの本、どれも化学物質でできている。(中略)
引用:本文P.12
水素と酸素という、誰もが知っている元素をそれぞれ2個と1個、混ぜたとしよう。そうすると、H₂O という化学式で表せる物質ができる。世界で最もよく知られている化学物資、すなわち水だ。これに別の元素、たとえば炭素を少し加えてみると、C2H4O2になる — つまりキッチンにある酢だ。各元素の数を3倍にするとC₆H₁₂O₆ 。これは砂糖である。
調理学では野菜の具体的な調理法を教えるのに対し、化学では野菜そのものに深く切り込み、何でできているのかを探っていく。含まれている元素が分かれば、すべて化学物質で表せる。
炭素(C)、水素(H)、酸素(O)のたった3つの元素。
組み合わせ方も違えば、出来あがる物質も違う。
実際にはもっと複雑なことだと思いますが、化学を敬遠しがちな人への取り掛かりとして、すごく面白い例えだと思います。
錬金術師の夢
「錬金術(アルケミー = alchemy)」。
アラビア語に由来し、語源はギリシア語で黒魔術を意味する。
あらゆるものを溶かせる究極の酸「万能溶化液」、死を回避する「不老不死の霊薬」、すべての病気を治す「万能薬」などが追い求められた。
錬金術師の最大の目標は、すべての金属を金に変えられる「賢者の石」。
錬金術は、化学反応に関する知識をもたらした一方、まずは当てずっぽうで行われた。
リンの発見のきっかけ
17世紀半ば。
ある日、ドイツの実験家、ヘニッヒ・ブラントは、とてつもない量の尿を煮詰めた。
なぜなら、尿は黄金色なので固めればあの貴重な金属になるのではないかと。
何時間もかかって煮詰めて、熱を加えてできた結果、できたもの。
強烈なニンニク臭をまき散らす、青緑色をした蝋に似た個体。
これが、リンの発見です。
金ではなく、リン。
5.5トンもの尿を煮詰めて得られるリンは、たったの60グラム。
人間の1日の尿量を1.5リットルとした場合、尿量5.5トン貯めるのに3,667日。
1人で約10年かかる。
夫婦2人でしても約5年。蒸発もするだろうから、もっとかかるでしょう。
最初の目的とは違うものの、尿は光らないが、光を放つ化学物質が含まれているということが証明されたのです。
元素は身のまわりにあることがわかる、面白いエピソードです。
スーパーマンの弱点
スーパーマンの映画「マン・オブ・スティール」で、登場人物のカル=エルを地球まで運んできた宇宙船を科学者が分析したところ、周期表にはない元素でできていた。(中略)スーパーマンの故郷であるクリプトン星には地球と違う元素があったのだ。
引用:P.65
映画の話なので、架空の物質であることに問題はないし、むしろワクワクする。
X-メンのウルヴァリンのアダマンチウム。ほんとにあるっぽい名前だったりするのがいい。
話しはそれたが、スーパーマンの弱点といえば、”クリプトナイト”。
化学式では、LiNaSiB3O7(OH) F2 。
緑色の結晶であるスーパーマンを弱らせる放射線を放出するクリプトナイトは、架空の物質である。
2007年、セルビアの鉱山でクリプトナイトに似た物質が発見されている。
クリプトナイトとは異なり、フッ素を含まず、白く、放射性物質を含まないという違いを除けば、他の構成は同じ。
架空の鉱物が実在するなんて、面白い。
まとめ
周期表一つひとつに物語がある。物語の内容は私たち次第で変わる。元素の力を乱用しないことが私たちのつとめである。周期表は、この短い年月で新参者たる人類がどれだけ遠くまで来て、どれだけ多くのことを突き止めてきたかを示す記念碑のようだ。
引用:P.254~255
人間は元素を発見し、研究し、いまでは携帯電話、コンピューター、カメラ、爆弾などありとあらゆるものに応用してきました。
身のまわりにある元素をユニークな切り口で紹介し、世界の一部を違った視点で見ることができる一冊です。